バイオマス発電は、「カーボンニュートラル(carbon:炭素・neutral:中立)」という考え方に基づいている。例えば、木材は燃やすとCO2を排出するが、樹木は光合成を行いCO2を吸収して成長しているため、全体ではCO2量がプラスマイナスゼロになり、大気中のCO2の濃度上昇に影響しないとされている。バイオマス発電所の中には、集荷される森林資源のうち製材や紙パルプ原料として出荷しないものや、間伐などで林地に残された未利用木材などを主燃料として利用しているところも増えており、資源の有効利用という観点からも環境に優しい発電方法である。自治体としては、地域の森林資源を発電事業に活かせるだけでなく、その収益を森林に還元する循環型の発電事業も可能になる。さらに、林地未利用材の集荷やチップ工場の長期的な稼働も実現できることから、雇用を中心とした経済効果に期待を寄せる自治体も少なくない。また、再生可能エネルギーの中でもバイオマス発電は、太陽光発電や風力発電のように天候の影響を受けることがなく、投入する燃料の種類と量をコントロールすることで、常に電力を安定供給できることも大きな強みである。
バイオマス発電所の建設においては、プラントの建設を発電事業者から請け負うエンジニアリング会社(EPC※)が主体となって、環境アセスメントや、自治体、さらには電力系統を管理する電力会社との調整を行い、計画が進められる。そして発電量に見合った電機品、機械品を選定し組み合わせて建設を進めていく。TMEICは、初期の検討段階からデータ提供を行うなど、EPCと連携し、発電所の各電機品、監視制御システムのトータルサポートを目指している。「バイオマス発電所の建設におけるTMEICの強みは、発電した電力を系統に送り出す『送変電設備』、タービンとつなげて電気を作り出す『発電機』、ボイラに水を供給するポンプや燃焼に必要な空気を送るファンなどを駆動する『モータ』と『ドライブ』、そして発電所の運転全般を管理する『監視制御システム』の全てに渡ってトータルエンジニアリングを提供できることです」と紅林は話す。
※EPC: Engineering_設計、Procurement_調達、Construction_建設を行うエンジニアリング会社
- バイオマス発電
- バイオマスとは、生物資源(bio)の量(mass)を表し、一般的には「再生可能な生物由来資源(化石資源を除く)」と定義されている。大きく、排泄物やゴミなど「廃棄物系」と林地残材や籾殻など「未利用系」、そして資源のために栽培される「資源作物系」の3つに分類され、発電以外にも燃焼熱による温水プールなど熱エネルギーとしても再利用されている。
国土の約3分の2が森林である日本において、木質バイオマス発電の普及が期待されている
バイオマス発電所で発電された電気を送り出す先の特別高圧電線の電圧は、約6万ボルトから10数万ボルト。それに対して発電時の電圧は約1万ボルト。そのため、発電した電気は何段階かに分けて、数倍から数十倍の電圧にまで昇圧して送り出す。そのための変圧器も大型になり、発電所の建設場所によっては、いくつかのパーツに分けて運び、現地で組み立てる場合もある。そして「発電所内で使用される電気は、当然自給自足的な形で賄われますが、最初に発電を開始する際、あるいは定期点検などのために発電所を止めた後に運転再開する際の電気は、電力会社からもらいます」と受変電技術を担当した蒲池は話す。発電所で使用される電気量は多く、電気を受け入れた瞬間に非常に大きな電流が流れるため、山間部など地方の限定された容量の電力系統では系統側に電圧低下を引き起こす可能性がある。「それを防ぐために電源を入れた瞬間に、いきなり大きな電流が流れるのを抑制する必要があります」と蒲池。他にも、送電系統での落雷事故や、電線が切れたり電線同士が接触するなどのトラブル、また発電所内での事故の際に、高機能の保護装置を適所に配置している。
大規模なバイオマス発電所では、中大容量モータだけでも数十台稼働しており、これらのモータが、燃焼用の空気を送るファンやボイラに給水するポンプを動かす。中島は、「TMEICのモータ自体も高い電気効率を誇っていますが、ドライブと呼ばれるインバータで周波数を調整しながらモータの回転速度を制御し、モータとドライブが一体となって無駄をなくし省エネ化を実現します」と話す。
さらに、中央監視制御システムは、計画通りの発電が行われるように、バイオマスボイラへの給水や燃焼制御を行うと共に、モータドライブ装置への指令、タービン制御、さらに木質チップなどの原料搬送や燃焼後の廃棄処理について、専用システムと連携を取りながら統括的な指令と監視・制御を行う。異常があれば直ちにアラートを発報してオペレータに通知することによりトラブル発生を未然に防止し、安全で安定した操業を保持する。これまで数々の発電所に携わってきた制御システム技術担当の根岸は、「中央監視制御システムの構築においては自社製品の制御はもちろん、他社製品とのインターフェースも重要であり、その仕様決めには細心の注意を払っています」と語る。
EPCとの二人三脚で、最適なトータルエンジニアリングを提供するためには、「多くの人の協力が不可欠。営業は、自社工場2工場4部門に加え、社外工場十数カ所を取りまとめながら、チームを管理します。そしてチーム全員で連携をとり、工程管理、出荷手配、現地調整などを行い、仕様変更や追加要求などにも臨機応変に対応しながら、完遂を目指して着実に一歩ずつ仕事を進めていくことを大切にしています」と紅林は話す。
中央監視システムまでをも自社で対応出来る電機メーカは、国内ではほとんど存在しない
<TMEIC 無限の技・術・力>
バイオマス発電の仕組みと
TMEICのエンジニアリング
大規模なバイオマス発電所において、
主幹となる大型の電機設備から安全・安定操業を支える監視制御システムまで
幅広く対応できるTMEICの総合力。
各発電所に最適な設備を構築するために、
細やかな技術検討や申請手続支援を行い、
ライフサイクルコストの低減にも貢献しています。
大規模なバイオマス発電所において、
主幹となる大型の電機設備から
安全・安定操業を支える監視制御システムまで
幅広く対応できるTMEICの総合力。
各発電所に最適な設備を構築するために、
細やかな技術検討や申請手続支援を行い、
ライフサイクルコストの低減にも貢献しています。
国が2012年に開始した再生可能エネルギーの固定価格買取制度を契機に、発電事業者の新規参入を含めて発電所の建設計画が増加しているバイオマス発電。買取価格の引き下げに伴い、事業効率化を図るために発電設備一基あたりの大容量化が進んでいる。「まさに、TMEICの発電機が得意とする容量帯の需要が拡大しています。依然としてタービンメーカやポンプ・ファンメーカは強力な競合ではありますが、トータルエンジニアリング力を武器にEPCと連携して、シェアを拡大していきたい」と紅林。
TMEICには前身である東芝、三菱電機から受け継いだ、エネルギープラントに関する電機製品ノウハウと、エンジニアリングのスペシャリストが数多くいる。さらに、発電所に限らず大型プラントを建設、操業する際の電気周りの製品技術、ソリューションは、国内シェアも高く、それだけ多くのノウハウが蓄積されている。しかし、「製品技術やエンジニアリング力だけでは市場に残ってはいけません」と紅林。電機製品単体の受注にとどまらず、TMEICの総合的な技術力を活かしてトータルで請け負える体制づくりを目指している。「TMEICには、モータ制御、送受変電、監視制御システムに関する技術をそれぞれ専門に扱う三部門がありますが、個々の技術部がもつ守備範囲を広げて、部門同士の垣根を超えた連携が必要であり、これがTMEICの新しい強みになると考えています」と紅林は語気を強める。
さらに紅林は、「それぞれに長けたスペシャリストの知見を結集してお客さまのニーズに応えていくために、まず私たち営業はクライアントの懐に飛び込み、何を望んでいるか、何にお困りなのかを深く理解することが重要です。そして、それを的確に社内のスペシャリストに伝え、きめ細かく、そしてお客さまが驚くほどのスピードでレスポンスを返す。それを繰り返すことが、TMEICという会社への安心感、信頼感と共に、社内スタッフ同士のチームワークや絆を生み出すのだと考えています」と話す。
日本だけでなく世界的にも再生可能エネルギーへの注目が高まっている今、「TMEICの技術力を総合的に発揮できるバイオマス発電所のプロジェクトを担当することは、胸を張れることであり大きな責任を感じます。先人や先輩方が築き上げてきた社内ネットワークやノウハウをさらに深め、若い世代にバトンを渡し、より強い『チームTMEIC』をつくっていきたい」と紅林は自らの目標を語る。
最適なトータルエンジニアリング提供のためには、社内外のスペシャリスト達との密接なコミュニケーションは欠かせない