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phase2 Vol.6 電力安定供給 × ティーマイク

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オリックス株式会社 環境エネルギー本部 事業開発部 太陽光チーム 課長代理 吉見 隆寛 氏 × 産業第三システム事業部 再生可能エネルギーシステム技術部 再生可能エネルギーシステム技術課 小浦 弘之

<MISSION>

電流と電圧は、水量と水圧に置き換えるとわかりやすい。流れる電気の量が「電流」。流れる強さが「電圧」となる。利用者にとって、電流はもちろん、電圧も高すぎると機器を壊してしまう。水とは異なり、発電されたら貯められず瞬時に利用者へ送られる電気は、発電および送電側にて24時間365日、電圧をリアルタイムで制御しなければならない。電力会社は自らの発電所を駆使して電圧制御に努めているものの、特に山間部や地方エリアにおいては、民間事業者による自然エネルギー発電所が多く、それら天候に左右される発電所からも送電網に電気が送られるため、電圧のバランスが崩れやすくなる。そのため、民間電力事業者に対して、あらかじめ電圧を規定内の値に整えた上で送電網に送る条件が提示されるようになってきた。
建設計画時に電力会社から要請を受けたオリックス洋野町有家(ひろのちょううげ)メガソーラー発電所は、TMEICが新しい方式を用いて開発した電圧変動抑制機能を採用し、電圧制御を実現した。

全国初※の機能を有するメガソーラー※2020年2月時点TMEIC調べ

発電所内の発電量をパネルごとに監視、 制御するメインサイトコントローラ

オリックス株式会社(以下、オリックス)は2019年1月、岩手県洋野町で約24MW(メガワット)規模の太陽光発電所の稼働を開始した。「当社は、全国で数多くの太陽光発電事業を手がけていますが、初めて電力会社様から、電圧変動抑制を条件として提示されました。いずれは必要になると考えていましたが、管内では前例がなく、正直なところ驚くとともに、コスト増やスケジュール遅延を懸念しました」とオリックスの吉見氏は、当時を振り返る。

オリックスは、早速TMEICに検討を依頼。支給された送電網(系統)のデータに基づき検討を重ねた。「新しい機器を追加するのではなく、パワーコンディショナに電圧制御機能を付加できるというTMEICの回答は、コストも抑えられ当初のスケジュールから大きな変更なく進められるため魅力的だった」と吉見氏。「これまで何度も想定外の課題を技術力で解決してきてくれたTMEICであれば、形にしてくれるのではないかという期待感もありました。太陽光発電所側における電力変動抑制は今、スタンダードなものになりつつあります。電力の安定供給が責務である電力会社様にとっても、発電事業を進める我々にとっても、全国に先駆けて実現できたことの価値は大きい」と吉見氏は話す。

オリックス洋野町有家メガソーラー発電所 オリックスグループは、総出力規模1,000MWを誇る、国内最大規模の太陽光発電事業者である。オリックス洋野町有家メガソーラー発

特に、北国の発電所の場合、雲だけではなく、積雪もまた日照を遮る要因となる

制御困難な自然を相手に

送電線に接続する系統連系点

太陽光発電は、太陽電池パネルで発電した電気をパワーコンディショナで直流から交流に変換し、その後、複数台の変圧器により電圧を段階的に、最終的には約100倍に上げ、電力会社が管理する送電線に送り出していく。この送電線に接続する箇所を「系統連系点」と呼ぶ。気候変動による発電量の変化のみならず、利用者による電気の使用状況によっても電圧は時々刻々変化するため、電圧変動抑制機能には、常に最適な電圧で系統連系点に電気を送り出せるよう制御することが求められる。さらに、昇圧する際に生じる電圧変動も考慮しなければならない。

このため、電圧変動をより精度良く抑制するため、系統連系点での電圧変動をリアルタイムに監視し、送り出された電気の電圧が系統連系点において安定的に目標範囲に入るように、メインサイトコントローラから各パワーコンディショナへ個別に最適な制御指示を出すTMEICの独自制御方式の実現を開発方針とした。小浦は「この方法であれば、パワーコンディショナから系統連系点の間で生じるわずかな誤差も制御ができます。社内の電気制御の専門家や送電の仕組みに詳しい技術者、パワーコンディショナの開発設計者などの協力を得ながら、開発を進めました。」と振り返る。まず、シミュレーションを用いて電圧変動抑制制御モデルを構築し、考案した制御手法が最適な効果を得られる事を確認したのち、各パワーコンディショナの発電状態に合わせた電圧変動抑制制御量の出力指令を出すプログラムを設計・製作し、制御機能がシミュレーション通りの動作を行うことを詳細に検証した。数週間の滞在を繰り返した現地調整試験では、様々な天気・気象パターンで動作試験を行い、微調整を重ねた。「発電側の環境はもちろんのこと、利用者の電気使用量も考慮して、慎重に現地で確認しました。実はもう少し早く現地調整試験を終えられると思っていましたが、やはり現地では想定外の事象もあり、なかなか思うような精度を出せず、結構こたえました。一時期は、夢の中でも現地調整試験をしていて、やっぱりうまくいかずうなされたり(笑)。今回のような電圧変動抑制機能の開発は、TMEICにとっても初めての挑戦。いろんな苦労がありましたが、最終的にはオリックス様とともに電力会社様の期待に応えられたことが何より嬉しいです」と小浦は話す。

独立した装置ではない電圧変動抑制機能の開発は、TMEICにとっても初の挑戦となった

<TMEIC 無限の技・術・力>
太陽光発電所の電圧変動抑制

太陽光発電所は、天候によって発電量が変動し、それは電圧の変動につながります。
大規模な発電所であれば、その発電所の敷地内であっても日陰や積雪の影響を受けることも。
不安定な電圧のまま電力系統に送電すると、工場や一般家庭の電気機器に影響を与える可能性があります。
TMEICのメインサイトコントローラは、系統連系点をリアルタイムに監視。
それぞれの機器における電圧変動を予測し、パワーコンディショナから送出される電圧を瞬時に制御、最適化することで、
電力系統へ送電する電圧を安定させます。

太陽光発電所は、天候によって発電量が変動し、それは電圧の変動につながります。
大規模な発電所であれば、その発電所の敷地内であっても日陰や積雪の影響を受けることも。
不安定な電圧のまま電力系統に送電すると、工場や一般家庭の電気機器に影響を与える可能性があります。
TMEICのメインサイトコントローラは、系統連系点をリアルタイムに監視。
それぞれの機器における電圧変動を予測し、パワーコンディショナから送出される電圧を瞬時に制御、最適化することで、
電力系統へ送電する電圧を安定させます。

予測できない未来に応え続ける

今後ますます国内でも、CO2削減が求められるなか、系統に接続される再生可能エネルギー発電所の増加が想定される。また、太陽光発電や風力発電だけでなく、バイオマス、水力、地熱、潮流など多様な発電施設の導入が進むことで、ますます電力安定供給のハードルが上がる。しかし発電側の事情にかかわらず、利用者にとっては電力の安定供給は当たり前のこと。「日本の電力事情は世界有数の安定性のため、海外と比べると停電の発生頻度は少ないですが、例えば精密機器の製造工場や病院など、わずかな電圧変動でも大きな影響を与える施設もあります。今回開発した電圧変動抑制機能は、電力安定供給の一助となる技術であり、再生可能エネルギーの普及に欠かせない技術になると考えています」と小浦。実際に、洋野町の案件をきっかけに電圧変動抑制機能について問い合わせが増えているほか、TMEICとしても再生可能エネルギー発電所に対して、これまでのパワーコンディショナだけでなく、電圧変動抑制機能や蓄電池も含めたワンパッケージ提案が可能になった。一方で2020年4月に「発送電分離」が実施され電力会社の送配電部門が分社化されるなど、日本の電力供給モデルは大きな転換期を迎え、予測不可能な要素も多い。それでも「今回のように、新たな課題に対して自分たちの技術力を駆使してそれに応えたという実績を積み重ねて、TMEICとしての力にしていきたい」と小浦は力を込める。

大学時代に再生可能エネルギーの研究をしていた小浦は、「目指していた分野に携わり、お客さまの近くで課題の解決に取り組めるのは大きなやりがいがあります。しかも、営業技術という職種は、社内外の実に様々なジャンルの“プロ”と接する機会を持てる職種。TMEICの技術の歴史と、周囲の経験豊富な先輩方に学びながら、“良いところ取り”をすることで、お客さまにさらなる付加価値を提供できる技術者を目指します」と抱負を話す。

社会を支える再生可能エネルギーの発展に伴い、電圧変動抑制機能は欠かせない存在となりつつある

社会を支える再生可能エネルギーの発展に伴い、電圧変動抑制機能は欠かせない存在となりつつある

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取材協力:オリックス株式会社

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