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Vol.14 運転員ファースト  ~設備の記憶を統べる者「PlantLogMeister」~ Play movie

モータ、パワーコンディショナ、受変電設備など電機機器メーカーとしての顔をもつTMEICだが、これらの機器をクライアントのニーズにあわせ、最適な形に統合するシステムも提供している。設備や機器はそれを動かす「人」やソリューション抜きでは稼働しない。TMEICは、主要納入先のひとつである化学プラントの現場において、運転員が交代する際、引き継ぎのために欠かせない「操業日誌」の運用における課題を抱えていることを知り、新たなソリューション開発に着手した。

key person(キーパーソン)

  • 産業システムソリューション技術部(中四国支店駐在)技術主査 神成 忠男
  • 中四国支店 産業第一課 担当課長 片桐 勝彦
産業第一システム事業部

眠らない現場

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化学プラントは24時間365日の連続運転が基本。なぜなら「たとえばプラスチック原料をつくる場合、ナフサという石油精製によってできた原料をパイプラインに流して熱分解する工程がありますが、突然停止させると化学反応が起きて危険な状態になり得るからです。24時間操業するということは、運転員も24時間現場にいなければならず、通常3交代制が組まれます。そして、同じ運転員がずっと担当することができないからこそ、次の運転員に自分の完了業務と残業務を明確に伝える必要があります。この作業を『申し送り』と言い、操業日誌に記録することが高圧ガス保安法で義務付けられています」と、技術主査の神成は話す。さらに、「『なぜ』その業務を行ったかを記載することも重要です。たとえば運転条件を変更した場合、起きた事象に対してなぜこのような変更をしたのか、これは安全・安定運転を司る運転員たちにとって大切な『手引き』になります」。ところが紙に書かれた操業日誌では、さかのぼって確認したいときに目視で探さなければならず時間と手間がかかるため、有効活用しにくい。「デジタル化することができれば、必要なときに瞬時に検索し、運転情報と連携でき、今後の運転に活用できます。そこで、紙が当たり前だった操業日誌の電子化を、2006年頃より検討し始めました」と神成。

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システムに業務を合わせるか?業務に合わせたシステムを作るか?

株式会社千代田組 中国支店 営業一課 担当課長 今川 征之氏

しかし実際にソフト開発を行なうにしても、TMEICは化学メーカーが必要とする電気設備や計装設備についてのナレッジは豊富だが、運転業務の詳細や「申し送り」の内容や流れについて把握しているわけではない。そこで当時、制御システム等を納入していた旭化成株式会社(以下「旭化成」)に「操業日誌の電子化に協力いただけないかとお話ししてみたところ、快諾いただくことができました」と神成。

開発のコンセプトは、最初から決めていた。「運転員ファーストです。『自分達で入力したデータが、自分達の業務の助けになる』と実感してもらえるよう、使いやすさと活用方法を追求しました」と神成。お客さまに実運用で使ってもらいながら改善を繰り返し、2年後ようやく電子操業日誌「PLM(PlantLogMeister)」としてリリースできる状態となった。早速旭化成は岡山県水島のプラントにて運用をスタート。さらに他のプラントへの導入も前向きに検討し始めた。「ところが、実際に運用する製造現場の方々から日誌の電子化に対する理解がなかなか得られず、導入が思うように進みませんでした」と、開発初期より営業として参画していた片桐は言う。「社内でも問題視する意見もありました。PLMは、お客さまの力をお借りしながらゼロから作り上げたTMEICの中でも珍しい製品です。ただ、これまでのTMEICが扱う製品の中では比較的低価格のパッケージソフトであるため、本当に事業性があるのかどうか社内でも意見が分かれました。それでも私は、一箇所の製造課でも導入しやすい価格設定であるため、複数の製造課が導入する場合の価格体系や年間保守サービスなどの販売モデルを築けば、事業として十分に成立すると考えました。また何よりも、お客さまから評価をいただけているのだから、他のお客さまにも必ず喜んでいただける製品だと信じていました。当時、中四国支店の営業課長だった上司も『広島発のソリューションへ発展させよう』と後押ししてくれました」と片桐。地道な営業活動を続ける中、チャンスが訪れる。「販売代理店の千代田組さんが、三菱ガス化学さまへの製品紹介の機会をつくってくれました」と神成。開発当初から技術担当者に同行し、PLMに愛着を持っている千代田組の今川氏は、「PLMは旭化成さまから評価をいただけていましたので、とにかく他のお客さまにも神成さんや片桐さんの話を聞いてもらいたいという一心で動いていました」。プレゼンで一番伝えたことは、PLMの細かい機能ではなかった。「運転員ファーストで開発してきた製品であること、お客さまの業務に合わせながら最適化していくサポート体制があること」だった。パッケージソフトに業務を合わせる必要がある一般的な製品との違いを評価いただき、2つのプラントへの導入が決定。そして2年後には全社導入が実現した。

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お客さま自らセールス活動

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この受注をきっかけに、PLMは一気に脚光を浴びた。三菱ガス化学株式会社と同時期に、株式会社トクヤマでも1サイトにテスト導入が決定。「その後、トクヤマさまの徳山製造所では、他の製造部署へと順次展開いただいています。また地元のメーカーや学校関係者に加え、計装メーカーなどが集まる情報交換会で、PLMの導入成果について発表いただきました。お客さまの生の声ほど、営業力のあるものはありません。トクヤマさまの発表やユーザー事例紹介としてパンフレットの作成をきっかけにPLMの評判が化学メーカーの間で口コミで広がり、多くの問合せをいただくことができました。何十年と営業をしてきましたが、このような体験は初めてですね」と片桐は振り返る。

その後、PLMは化学メーカー各社で次々と導入が決定。「まとめて10サイト以上への導入を一度に決めていただけるなど、開発当初では想像できないような導入数とスピードでした」と神成。ところが、お客さまの要望を実現することで喜ばれる製品へと育ててきたPLMだったが、販売数の伸びとともに以前のような手厚いサポートを行うことが難しくなっていった。「本来であれば、お客さまからのお問い合わせはすぐに対応するべきですし、改善に対する要望は、早急に次のバージョンアップで対応すべきか検討しなければなりません。それが、納入先の急増で技術・営業・開発、とすべてのリソースが厳しく後手後手になってしまって。PLMに期待いただいているお客さまに申しわけなく、一番苦しい時期でした」。会社としてPLMのプロジェクト体制を見直し、お客さま側でも設定を変更しやすいシステムに改良。そして、改めて『運転員ファースト、サポートの充実、標準機能の充実』の3つのコンセプトを守り続ける決意をした。

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ビッグデータの活用

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2015年度からのPLMの導入サイトは急激に拡大。さらに大型受注に向けて、「試験導入中のお客さまに本格導入していただけるよう、各サイトに通い、運用形態と要望を確認し技術担当に持ち帰っています」と話すのが、入社4年目の内田。「導入数が増えてきたと言っても、まだ化学メーカーさまの一部に過ぎません。できるだけ多くの実績をつくるためには、操業日誌の電子化について問合せがあったお客さまだけでなく、まだ顕在化していないお客さまにも訪問し、たとえばIoT化の促進などを切り口に、PLMの効果をイメージしていただくことが大切です。先輩方がお客さまとともに作り上げたTMEIC発の新しいソリューションを大きく育てていくことが、私たちの代の役割だと思います」と内田は力を込める。

今まで運転員のためのシステムとして開発し、納入先の化学プラントにおいて、なくてはならない存在になったPLMだが、最近では単なる「申し送り」のシステムに留まらない拡がりが出てきている。神成は、「お客さまが運用する複数プラントで導入されることで、プラント同士をつなぐ“インフラ”の一つになってきていると感じています。これからさらに、製造部門同士の連携、製造部門と設備関連部門との連携など、管理者が主要あるいは重要ポイントを瞬時に把握・判断できる状態を目指して、プラント内での様々なセクションのシステムをつなぎ、『申し送りシステムから、プラント全体の操業管理システムへ』と進化させていかなければなりません。そして、石油化学メーカーに限らず、様々な分野でメーカー各社が蓄積している製造や品質に関する情報を司る存在となり、いわゆるビッグデータ解析機能もプラスすることで、生産性向上・品質向上に直結するものにまで育て上げていきます」と今後を見据える。

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Interview movie(インタビュー動画)

取材協力(五十音順):
旭化成株式会社  
株式会社トクヤマ  
三菱ガス化学株式会社

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