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phase2 Vol.02 日本最大級ガス田 × ティーマイク

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国際石油開発帝石株式会社 国内E&P事業本部 東日本鉱業所 長岡鉱場 生産課 課長 深田 光善 氏 × 産業第一システム事業部 モータ&ドライブ技術部 モータ&ドライブ技術第二課 技術主任 坂田 安生

<MISSION>

資源が少ない国と言われる日本。天然ガスにおいても、大半を諸外国からの輸入に頼っており、国産は非常に希少なものとなっている。その中で、国際石油開発帝石株式会社(INPEX)が保有する「南長岡ガス田」は、日本最大級のガス田。しかし、そこから掘り出した天然ガスを精製する工程では、ガスの圧力をコンプレッサーにより高めることが不可欠であり、それらを駆動させる超高速モータの供給がTMEICに対して求められた。

貴重な国産天然ガス

天然ガスを採取する「クリスマスツリー」

南長岡ガス田から採取された天然ガスを処理する「越路原プラント」は、1984年より稼働。ガス処理能力は国内最大級の日量420万Nm³(ノルマルリューベ・標準立方メートル)、一般家庭で言うと約110万世帯分の1日のガス消費量に当たる。
クリスマスツリーと呼ばれる装置によって地下5,000mにあるガス層から採取された天然ガスは、油分や炭酸ガス・水分などの不純物が含まれているため、高圧セパレータ、炭酸ガス除去設備、冷凍装置を通って処理される。さらにパイプラインを通って一都八県の都市ガス業者や工業地帯へ送られる。「ライフラインに直結しているという使命感を持って、日々取り組んでいます」と生産課長の深田氏。
長年採取を続ける中で、徐々に地中から噴出するガス圧は低下する。そのため、より効率よく精製工程を通過させ、供給パイプラインにガスを送り出すために、採取したガスを人工的に昇圧する必要がある。コンプレッサの駆動に必要な回転機のスペックは、毎分1万回転。通常は、採取されたガスをそのまま利用できるガスタービンが採用されることが多い。しかし、ガスタービンはエネルギー効率や環境負荷、さらには定期的なメンテナンスによる停止期間が必要などのデメリットがあった。越路原プラントでは、採取した天然ガスを利用して発電を行っていたことから、その電気を活用し、より効率のよい超高速モータを採用した。

「INPEXは、オーストラリアや中東、東南アジアなど世界各国で、石油や天然ガスの生産事業を行っています。多くのプラントは極寒地や砂漠といった容易にはアクセスできない地域に位置し、そこで稼働する設備にはできる限りメンテナンスが少ないものが求められますので、今回は実績づくりの狙いもあり超高速モータには、ギアレス、ユーティリティレスの条件をつけさせていただきました」と深田氏。

DATA
国際石油開発帝石株式会社(INPEX)〜南長岡ガス田・越路原プラント〜
新潟県長岡市の南西約10kmに位置する。現在、南長岡ガス田には15ヵ所の天然ガスを採り出すための井戸(生産井(せいさんせい))がある。越路原プラントで処理された天然ガスは総延長約1,400㎞のガスパイプラインを通って関東甲信越地方に送られる。

降積雪対策、更に主要機器の二重化などにより、集中監視制御の下、24時間365日ノンストップで生産体制を整備

世界でも数社しか作れないモータ

超高速モータを制御するドライブ装置

モータの通常回転数は最高でも毎分3,000回転程度。それを3倍超の1万回転に上げるために、通常はモータとコンプレッサの間にギアを挟むことが多い。しかし、ギアには潤滑油などのユーティリティが必要となり、メンテナンス対象設備も増える。そこで今回TMEICが納入したのは「可変速ドライブシステム」。これは、ドライブ装置(インバータ)と呼ばれる、周波数の変換装置で駆動する超高速モータだった。モータの回転数は周波数の増減によって制御できる。日本国内の周波数50~60ヘルツを、ドライブ装置によって3倍超の200ヘルツ程度に増幅し、モータの回転数を1万回転に上げることを可能にした。

さらに、モータの軸が回転する際の軸と軸受の間の摩擦を減らすために、通常は「スリーブベアリング」と呼ばれる油を使った軸受を採用するが、これも油というユーティリティが必要となり、また摩擦がゼロにはならない。そこで「マグネットベアリング(磁気軸受)」を採用し、電磁石の力で軸を軸受の中心で浮かせた状態で回転させることで、限りなく摩擦をゼロに近づけることができた。

さらに、産業安全技術協会による電気機械器具防爆構造規格をクリアする必要があった。今回選択したのは、内圧防爆と呼ばれるモータ構造。モータの内部に保護気体を圧入して内圧を外気よりも高める。そうすることで爆発性ガスの進入を防止する仕組みだ。

「TMEICが長年、モータとドライブ装置を製造してきたからこそ厳しい技術要件に応えることができました。そして、自社内で組み合わせ試験を繰り返し行うことで緻密な調整を行い、納めることができました」と技術主任の坂田は言う。

毎分1万回転で運転する巨大な超高速モータ。中央下部の円盤状の内側にマグネットベアリングが納まる

<TMEIC 無限の技・術・力>
ユーティリティレス磁気軸受超高速モータ

増速ギアを使用せず、毎分1万回転を実現するTMEICの「ユーティリティレス磁気軸受 超高速モータ」は、
三菱電機や東芝から受け継いだ技術力と、これまでに蓄積した豊富なデータで、大型化に伴う課題をクリア。
例えば、ロータは径を大きくせず長くすることで、高速回転時の遠心力・振動を抑え、安定化を図りました。
また、モータ本体の発熱への対処として強制空気冷却方式を採用。
オイルや水などユーティリティを使用しないことで、メンテナンス費用や環境に優しい仕様を実現しています。

大規模な太陽光発電設備では、
発電した電力を無駄なくかつ効率的に運用する技術が不可欠。
TMEICは世界最高水準の効率を誇る「太陽光発電システム」と
「大容量蓄電システム」を組み合わせ、
発電、蓄電、供給を効率よく運用することで、
省エネ化と安定した電力供給に貢献。
また、太陽光だけでなく、風力、地熱、
バイオマスなどにおいても、
「再生可能エネルギーシステム」を提供し、
新エネルギーの導入拡大を支えています。

環境に寄り添える産業を

産業第一システム事業部 モータ&ドライブ技術部 モータ&ドライブ技術第一課 技術主任 上原 考広

今回納品した「ユーティリティレス磁気軸受適用超高速モータ」を組み込んだ「可変速ドライブシステム」は、高効率化や省エネの実現とユーティリティレスシステムの技術基盤を確立したことが評価され、石油学会の「2017年度 技術進歩賞」を受賞した。資源の少ない国内では新たな設備をつくるプラントは少ないが、既存の設備で蒸気タービンやガスタービンを採用している場合、CO2などの排出量基準をクリアできないなどの理由から、電動の超高速モータへの設備更新を検討する顧客がますます増えている。また、「潤滑油などが必要ないユーティリティレスの超高速モータやドライブ装置は、海外の砂漠や極寒地、いわゆる過酷な環境に設置されるコンプレッサ設備への導入の際、大きな競争力を持つことになります」と、技術主任の上原。

モータというものは産業の発展において、まさにその中心にあった。今もなお、工場やプラントでモータは必要不可欠。そして、ただ回ればよかった時代から、『故障しないもの』をつくる時代になり、さらに『ドライブ装置』と呼ばれるインバータでエネルギー効率よく回転数を制御するようになった。そして今、地球環境への配慮も求められている。「昔からあるモータのような基本構造が変わらない製品に携わりながらも、新たに生まれるニーズに真摯に向き合う。国内でも類を見ない、世界でも数社しか作れないような高いレベルで開発に携われていることを技術者として誇りに思います」。TMEICに入社して以来、モータ&ドライブ装置に携わってきた上原はそう語った。

ユーティリティレスの設備は、
今後、海外などの過酷な環境下での導入が見込まれる

<MOVIE>

取材協力:国際石油開発帝石株式会社(INPEX)

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