• TOP
  • phase2 Vol.05 技術開発 × ティーマイク

phase2 Vol.05 技術開発 × ティーマイク

Play movie
回転機システム事業部 大形回転機第一部 設計課 課長 坪井 雄一 × 回転機システム事業部 大形回転機第一部 設計課 主任 栗田 聡

<MISSION>

モータはその誕生から150年以上、電気エネルギーを回転エネルギーに変換し、機械を動かすという基本原理は変わっていない。しかしその原理の上で省エネ・環境負荷低減を実現する高効率性、ランニングコストを抑える省メンテナンス性、引火や爆発から守る防爆性、低騒音化など、さらなる付加価値を高めるべく様々な技術開発が行われてきた。TMEIC京浜工場では、カスタムメイド設計でモータを個別受注生産し、お客様のあらゆるニーズや要求仕様に応えている。

モータ開発の仕事

日本で初めて開発された二相誘導モータ

モータは、コイル、回転子、回転軸といった外部から供給された電気エネルギーを回転力に変換しその先に伝える機能を持つ心臓部と、心臓部を保護する構造部、さらに運転時に発生した熱を冷却する冷却装置などから構成されており、それらが効率、温度制限といった要求仕様にあわせて複雑に絡み合っている。「一つひとつの部材がどのように機能しあっているかを整理しておくことが重要です。そうすればお客様の要求に応えるために、開発段階に戻って全体設計を見直すべきなのか、一部のみ再検討すれば対応できるのか見抜くことができ、提案力の差につながります」と坪井。

TMEIC京浜工場では、大形のモータおよび発電機を製造している。主に石油や液化天然ガス、鉄鋼プラント、発電所において生産ラインの重要な部分に使用される機器だからこそ、万が一運転時に異常が起こると、プラントが止まり、お客様の生産計画はもちろんのこと、社会インフラにも大打撃を与えてしまう。ゆえに、製品の品質管理・品質保証が重要になる。

当然ながら、納品する製品の設計が正しいことを保証することはメーカーとしての責務だが、その際、部材の構成要素だけでなく用途や設置場所についても考慮が必要になる。既存の試験設備で証明できない場合は、実際に使用される条件を再現しなければならない。「入社当初に携わった、船舶用の『二重反転プロペラポッド型推進モータ』が印象に残っています。スクリューを船体から離して船底にポッド(さや)をぶら下げることで、客船内の振動や騒音をなくすために考案されたものですが、モータ冷却をポッド周辺の海水で行う仕様でした。冷却の度合いを想定し、モータの出力をどこまで上げられるか検討・実証するため、工場内に試験専用プールを用意したんです。最初は水を防火水槽から引いていたため濁っていて記録撮影ができなかったり、生き物が混じり込んだり、といったこともありました」と坪井は振り返る。

基本構成は変わらないものの、鋼材、銅材、絶縁などの部材が複雑に絡み合うモータは全体の最適化が重要となる

超高速モータの開発と試作

四力がどのように働くかをシミュレーションする

TMEIC京浜工場では、大形の超高速モータ開発に30年以上前から取り組んでいる。超高速モータは回転数が高いため、回転子が高温になる、大きな力が作用する、など難しい設計になるが、社会インフラを支えるような重要なプラントでも使用されるモータだからこそ、開発は慎重に行われる。「超高速モータの場合、これまで作ったことがないような大容量、回転数を求められることもあります。理論値で保証できないと判断した場合は、試作機を製造します」と栗田は話す。試作機を製造するのは開発コストや時間がかかるものの、大形の超高速モータの場合、理論通りにいかないことが多くあるため、試作機で検証を行う。「例えば、巨大なモータが高速で回転すると大きな遠心力によって回転子の部材が離散する方向に強い力を受けます。そのため、固定子など、回転子を支える部分の構造は、強い力に耐えられる充分な設計が必要となり、試作機を使って、解析やモデル試験で検証を行います。また、回転子の振動が増大してしまう特定の回転数『危険速度』というものがあります。それがお客様が必要とする回転数の範囲にかからないよう、回転子と軸受の形状や特性を踏まえて試作前に徹底的に解析します。さらに、石油化学プラントのような可燃性物質を扱う現場に納める際は、指定された温度の上限を超過しないようにするため、同じようにモータの発熱抑制や冷却方法を検討し、解析します。モータの回転子ひとつとってみても性格の異なる部材を多数使っているので、必ずしも教科書の理論値どおりにはならないからです」と栗田。

開発には、出力、回転数、効率を検証するために電気の専門知識は必須。さらに、大形モータは機械の要素も大きいため機械工学における四力の知識が必要になる。栗田は、「回転に部材がどれだけ耐えられるのかを解析するために『材料力学』が、振動解析のために『機械力学』が、回転子の空気摩擦を解析するために『流体力学』が、運転中のモータを空気や水でどのように冷却するかを検討するために『熱力学』および『伝熱工学』が、というように四力を駆使しなければなりません。これらをまとめ上げて1台のモータに凝縮させるところが、大形モータ設計の面白いところでもあり、難しいところでもあります」と話す。

試験中の超高速モータ。大形の回転体ゆえに厳密な安全性が求められる

<TMEIC 無限の技・術・力>
モータの危険速度

危険速度には、一番大きい振動を起こす一次危険速度に加え
二次危険速度、三次危険速度があります。
大形の超高速モータの場合、要求される回転数の運転範囲が
一次危険速度と二次危険速度の間にくる場合が多く、
回転子の剛性と回転子を支える軸受の特性を踏まえながら
要求される回転数の運転範囲に危険速度が重ならない安全な設計を実現しています。

危険速度には、一番大きい振動を起こす一次危険速度に加え
二次危険速度、三次危険速度があります。
大形の超高速モータの場合、要求される回転数の運転範囲が
一次危険速度と二次危険速度の間にくる場合が多く、
回転子の剛性と回転子を支える軸受の特性を踏まえながら
要求される回転数の運転範囲に危険速度が重ならない
安全な設計を実現しています。

開発は未来への投資

欧州に納入された超高速大形モータ

技術者には誰しも、一番良いものを作りたい欲求がある。「新規開発はやりがいがありますし、一般機への波及による製品付加価値向上によってTMEICの製品競争力が向上します。しかし、開発には投資が伴います。部材費、人件費、新たな製造設備が必要な場合もあります」と坪井。例えば高い性能が要求されるモータの引き合いがあった場合、これまでのラインナップの応用で対応できるのか、既存設備を活用できるか、無理であればどのようにすれば開発費を抑えながら要求に応えられるか、を考え抜く。「1社からのスペシャルな要求だったとしても、応用範囲を広げられる構造を検討します。そうすればお客様にも価格を抑えた製品を提供できますし、その技術を応用し広く提供することができれば、自社の財産となるだけでなく、社会的貢献度も向上すると考えています」と坪井。

TMEICは、これまで120年以上に渡ってモータを製造してきた技術力の蓄積がある。これを、確実に伝承していくことも、TMEICの未来を築く礎となる。「ベテラン技術者となると、過去の設計経験から『なぜこの形状なのか』『なぜこの部材が必要なのか』を既知の技術として認識しており、毎回原点に立ち返る訳ではありません。若手と共に開発に取り組みながら、昔の開発資料を読み返して技術の由来を知る『棚卸し』が重要だと考えています」と坪井。この棚卸しした技術を最新の解析手法を用いて最適化することで、競合ひしめく欧州においてTMEICが技術的に競合を抑えて受注した実績もできてきた。「今、開発に取り組んでいるものが、明日の当たり前になっていきます。『現状維持とは停滞である』という先輩方の言葉を胸に、一段、二段、上の技術を次の世代に渡していけるよう、実力をつけていきたい」と栗田は若手技術者としての決意を示す。

多年にわたり蓄積されてきた技術力を紐解き発展させ、次の世代に伝承していく

多年にわたり蓄積されてきた技術力を紐解き発展させ、
次の世代に伝承していく

<MOVIE>

その他コラム

  • WHAT IS TMEIC?
  • TMEICMAN ティーマイクマン
  • TMEIC RECRUIT(採用情報)