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phase2 Vol.07 全自動港湾クレーン × ティーマイク

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産業第二システム事業部 システム技術第二部 産業システム設計課 主任 技術士(電気電子部門)野口 英男 × 産業第二システム事業部 システム技術第二部 産業システム技術課 技術主査 中村 大介

<MISSION>

米国のバージニア港湾局(以下、VPA)は、2005年にバージニア・インターナショナル・ゲートウェイ(以下、VIG)の建設を計画。世界の主要コンテナターミナルに勝る、高い稼働率を安定的に実現する必要があった。TMEICは、北米初となるコンテナターミナルの自動化を実現。2007年のターミナル稼働後、VIGはThe Crown Jewel (収益性の高い事業部門・重要資産)of the VPAと呼ばれるほど、コンテナの取扱量を伸ばした。さらに、2019年には第二期工事で自動化エリアを拡張し、コンテナ取扱量を倍増させている。

北米初の自動化コンテナターミナル

オペレータのスキルやコンディションに左右されない技術

世界の貿易貨物輸送において、その主流となるコンテナ輸送。世界中の港湾を結ぶ海上輸送と国内陸上輸送が交わり海陸中継の要を担うのがコンテナターミナルと呼ばれる港湾施設である。VIGがあるバージニア港は、ニューヨーク港とジョージア港の間にあり、米国東海岸の重要港湾に位置付けられている。東海岸で最も水深が深く、世界各国からの大型コンテナ船の寄港が可能なため、国内向けの貨物だけでなく、別の船に積み替えて他港に運ぶハブ港湾としての機能も果たす。現在6つのコンテナターミナルを運営するVPAは、州内で37万人の雇用を生み出し、これは、同州の労働力のほぼ10%にあたる。

コンテナターミナルの収益性を高めるためには、24時間365日、計画的かつ安全に多量のコンテナを迅速に捌くことが求められる。コンテナターミナルは、コンテナを船から降ろす、あるいは船に揚げる「岸壁エリア」、コンテナを一時保管する「コンテナヤード」、そして輸入したコンテナを国内各所に配送、あるいは国内から輸出するコンテナをトラックから受け入れる「ゲートエリア」に分けられ、ターミナル全体の効率化のためには、特に、コンテナヤードにおける荷捌きが重要と言われる。

世界でも屈指の大型コンテナターミナルであるVIGは、2005年、北米で初めての自動化を決定。既に世界各地へのクレーン自動化システムの納入実績を持つTMEICの米国現地法人、TMEIC Corporationが受注。TMEICも日本からエンジニアを送り、プロジェクトに参画した。「人間が運転する場合、個人の経験値やその日のコンディションによって作業スピードが変わります。また、悪天候だと作業が困難になったり、高所作業のため危険も伴います。自動化システムによってコンテナヤード内のクレーンを自動稼働させることができれば、コンテナヤードを無人区画化し、必要な時だけクレーンオペレータがリモート室で遠隔操作することになります。VIGが導入したオートスタッキングクレーンは、人間が運転する通常のクレーンの約5倍の時速18㎞での高速移動が可能ですから、作業スピードがUPし、無人化によって安全性も高まります」と中村は話す。TMEICは、第一期工事分を2007年に、第二期工事分も2019年に"On Time, On Budget"(納期通り、かつ予算内)で完遂。現在、約263,000㎡のコンテナヤード内で計56基のクレーンが自動稼働している。

DATA
バージニア・インターナショナル・ゲートウェイ(VIG)
米国のバージニア港湾局(VPA)が管理する6つのコンテナターミナルの中でも最大級。VIGのあるバージニア港はアメリカ東海岸でもっとも水深の深い港。世界最大のノーフォーク海軍基地を擁するアメリカの要衝であり、世界各国からの大型貨物船舶も寄港。大量のコンテナの荷役が行われている。

眠らない港、VIG。クレーン自動化技術が24時間稼働を可能にしている

巨大な積み木をピタリと積む

わずか40cmの隙間を感知し±2.5cm以内の精度で積む

自動化に必要なのは、熟練のクレーンオペレータに勝るとも劣らない精度と、想定外の事が起きても対応できるプログラム処理。「大きく分けて2つ、ポイントがありました」と野口。1つ目は、コンテナの積み降ろし作業におけるレーザー技術の応用だった。主に取り扱われる40フィートコンテナは、長さ約12m、高さ約2.6m、幅が約2.5m。その巨大なコンテナが5段積み重ねられ、ヤードに並べられる。各コンテナの隙間はわずか40㎝。上下のコンテナには凹凸はなく、積み木のようにただ重ねるだけ。「許されるズレはわずか±25㎜。真っ直ぐに積めなかったり、他のコンテナにぶつけてしまうと、最悪の場合崩れてしまうことも。私もシミュレータで試してみましたが、針に糸を通すような繊細な作業だと感じました」と難しさを話す。それを可能にしたのが、TMEICのレーザー技術であるMaxview™システム。「クレーン上部に取り付けられた2次元レーザセンサによって、置く位置にあるコンテナと吊っているコンテナ、それぞれの正確な位置や大きさ、輪郭をリアルタイムでスキャンし検出します。それだけでなく、重さ30tものコンテナを吊っているワイヤーの伸びやクレーンのしなりなども含めて演算し、正確かつ迅速なコンテナの積み降ろしを可能にしました」と野口。

2つ目は、いかなる非常時にも自動運転を問題なく継続させるプログラム設計だった。コンテナターミナルでは、全てのコンテナの保管や移動、その期間やタイミングを管理しているターミナルオペレーティングシステム(以下、TOS)が稼働している。TOSは港湾ごとにメーカー・仕様が異なるが、クレーン自動化システムはTOSとのデータのやりとりを最適な連携で行えるよう設計される必要があり、それは非常時でも例外ではない。「例えば、イレギュラーな要因で自動運転が中断された時、当然エラーを起こしてはいけません。TOSにより指示された場所にあるべきコンテナがなかった場合や、一時的にオペレータが手動介入し再び自動化に切り替えた場合など、約100の工程に分けて例外処理への対応を検討しプログラムを設計しました」と野口。

自動化は保守面でも効果を発揮している。野口は、「リモートで常時全クレーンを監視しているため、万が一クレーンが故障した場合も、すぐに必要な部品を判断して修理作業の効率化が図れます」と話す。想定外の展開や故障にも動じる事のない安定した稼働を実現した。

衝突防止のためのレーザセンサ技術との組み合わせにより、安全にクレーンの自動運転ができる

<TMEIC 無限の技・術・力>
レーザセンサによる操縦アシスト
Maxview™システム

クレーンで搬送中のコンテナの輪郭と、既にコンテナヤードや船上に置かれているコンテナとの位置関係を、レーザセンサでリアルタイムに検出。
クレーンオペレータの死角の様子も把握できコンテナの衝突を回避できるため、
安全なオペレーションが可能になるのが「Maxview™クレーン運転アシストシステム」。
クレーンオペレータをサポートする次世代の技術です。

クレーンで搬送中のコンテナの輪郭と、
既にコンテナヤードや船上に置かれているコンテナとの位置関係を、レーザセンサでリアルタイムに検出。
クレーンオペレータの死角の様子も把握でき
コンテナの衝突を回避できるため、
安全なオペレーションが可能になるのが
「Maxview™クレーン運転アシストシステム」。
クレーンオペレータをサポートする次世代の技術です。

コンテナヤードの完全自動化

Maxview4D™システムの3次元スキャンによるトラックの荷台検出

現在、世界には約1,500のコンテナターミナルがあり、自動化されているのは約50箇所。今後、中国・インド・中東などで、建設計画中のものを含め、100箇所を超えるターミナルが自動化される見込み。初期投資が大きいからこそ実績が重視される傾向が強いが、「TMEICのような電機メーカーだけでなく、クレーンメーカーも参入してきています。中でも中国企業は価格競争力が高く、TMEICも現状に甘んじず新たなソリューション開発を行っています」と中村。その1つが、Maxview4D™システム。これまでは、陸上輸送に際して、トラックの荷台にコンテナを積む作業は、荷台の形状がトラックメーカーや対応するコンテナサイズによって異なるため、レーザセンサによる2次元スキャンでは検出が難しく、自動化が進んでいなかった。それが、Maxview4D™システムによって、コンテナを吊ったクレーンがトラックの荷台に近づく際に連続して2次元スキャンを行い、その蓄積したスキャンデータを3次元化することで、正確に形状を検出できるようになった。「これで、ヤードエリアの全てを完全自動化できることになります」と野口。すでに、中国上海の洋山港や青島港で導入実績があり、UAEアブダビのカリファ港湾ターミナルへの導入も決定した。

日本の港湾においてもターミナルの自動化や、港湾局と関係各社で物流情報を共有して荷役効率を向上させるAIターミナル化、貿易関連業務のIT化など、主要港湾の国際競争力強化に向けた国家施策「Port2030」が進行中である。「TMEICには、海外でのターミナル自動化プロジェクトの実績が多くあります。日本のターミナルにも我々の技術を応用し、日本の港湾の国際競争力強化へ貢献したい」と中村。

中村と野口は入社以来、港湾クレーンのプロジェクトに携わっている。大学で制御工学を学び「クレーンのロボット化」を目標として入社した野口は、「東京港や横浜港のプロジェクトを経験し、現在は北米を担当しています。巨大クレーンが、理論通りに動いた時の達成感は格別です」と話す。中村は、「海外のエンジニアたちと切磋琢磨しながらクライアントの期待に応える仕事は、やりがいが大きい。TMEICの存在感を高めるべく、これからも経験を積んでいきたいです」と抱負を語る。

かつては日本の港湾も世界的な競争力を持っていたが、近年韓国やシンガポールの後塵を拝している

<MOVIE>

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取材協力:The Port of Virginia

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