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Vol.11 グローバル最適購買とは 〜世界から買い、世界で作り、世界へ売るために~ Play movie

TMEICがつくる産業用エレクトロニクス製品は、それぞれ数百から千を超える部品で構成されている。本社の資材部は、国内の各工場(府中・神戸・長崎・京浜)、各現地法人(中国・インド・アメリカ・イギリス・シンガポール)にいる調達担当と連携しながら、価格交渉と納期調整を行い最適購買の実現を目指している。

key person(キーパーソン)

  • グローバル調達グループ スペシャリスト 武村 圭祐
  • グローバル調達グループ 竹川 みず帆
資材部

ローカルかグローバルか”

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例えば太陽光発電用パワーコンディショナは、約1,150もの部品から構成されている。「部品は、大きく2つに分けられます。1つは、コンデンサ・素子・ブレーカーなどの電気部品。もう1つが筐体・フィンなどの構造部材です。電気部品は日本・中国・インド・アメリカで共通性があるため、私がいるグローバル調達グループで一括して価格・納期の交渉を行い各拠点に供給します。一方、構造部材は各生産拠点で採用している仕様が異なる場合があったり、またサイズが大きく輸送費がかかってしまう場合があることから、各生産拠点がローカルベンダーから購入するケースが多いです」と武村。ただし、例えば構造部材であっても、ローカル調達よりもグローバル調達の方が価格を下げられるケースもあり、本社の資材部が生産拠点と情報共有を密に行いながら、最適購買を実現する必要がある。「特に国内の工場では、これまで海外部品をあまり採用してきませんでしたので、海外の新しいベンダーの部品を採用することに慎重になるケースもあります。けれど、当社製品の競争力向上に欠かせない選択肢ですので、各ベンダーへの信頼性や他社への納入実績を検討してTMEICにとってベストなメーカーがどこなのかを設計・品質管理の皆さんと議論します。自分が苦労して見つけたメーカーに思い入れはありますが、調達という仕事は常にフェアであるべきだと考えていますので、冷静に対応しています」と言う。

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現地流か日本流か

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2017年1月5日、武村はアメリカのヒューストンに飛んだ。パワーエレクトロニクス製品を製造する現地法人(TMPE)は、これまで月に10台程度のペースで稼働していたが、「4ヶ月で約60台納品するという大型かつ短納期の案件が舞い込みました。アメリカは、太陽光エネルギーにおいて世界の三大マーケットの1つですので、無事に納めることができれば大きなチャンスにつながります。資材部としても大量に必要となる部材の確保、価格交渉を支援することになりました」。現地に到着し、まず調達マネージャーに進捗を確認。すると、「驚いたことに全体の30%しか調達の目処が立っていなかったので、急ぎ必要な部品数の洗い出しや発注先の整理を行いました。また、納期についても確認したところ、注文書に要求納期を記載してメーカーに送った後、確認の連絡をしていないとわかったんです」。最初は現地流に合わせていたが、一度納期遅延が起きた後に現地スタッフに日本流を提案。主要部品については全ての発注先に納期確認を行うことにした。また、価格交渉の仕方も異なった。「日本では定期的にメーカーと価格交渉を行いますが、アメリカでは最初にハードな交渉をして価格を決定すると、その価格を長期間適用するケースを目にしました。どちらもメリット・デメリットがあるのですが、今回のプロジェクトではこれまでの6倍近い発注になりますので、ボリュームディスカウントを求めてローカルベンダー50社と価格交渉を行いました」。結果、ネジなどの安い部品から、数十万円する部品まで、すべてを最適な価格帯で調達することができ、「日本側のノウハウを、現地支援に活かせる手ごたえを感じました」。

さらに、メキシコから調達する構造部材の筐体については、納期調整に苦慮した。「生産ラインチェックのため、幾度もメキシコに通いました。まさに弾丸ツアーです。朝5:30にホテルを出発し空港へ。2時間飛行機に乗り、車で1時間移動。昼からメキシコで現場確認を行い、夕方に日本とテレビ会議。ホテルからヒューストンにレポートを送り、束の間横になって朝4時にチェックアウト。6時のフライトでヒューストンへ。当然、ホテルでは朝食を食べられないので、早朝から開いていた空港のオムレツ屋さんで食べていました。上司に『いずれここのメニュー、制覇することになるんじゃない?』と言われて、そんなに通うことにはならないだろうと思っていたのですが、本当に全6種類制覇することになりましたね」と笑う。そんな課題の多いプロジェクトだったが、武村は「現地の皆と協力して予定通り全数を納品した時の達成感は忘れられません。」と言う。

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会うか電話か

資材部 グローバル最適購買推進リーダー チーフスペシャリスト  弘茂 岳司

調達の仕事は、「各生産拠点の設計の皆さん、調達担当の皆さん、世界中のベンダーの担当者とコミュニケーションを重ねてこそできる仕事です」と竹川は言う。ベンダーと好条件で交渉できるよう各生産拠点の要件をまとめる。海外のTMEICのことを知らないベンダーに対して、TMEICと取引することのメリットを感じて競争力のある価格を出してもらえるように、今後の生産見通しなどを連絡する。そういった「自分がハブとなって、得られた情報をもとに各方面に対して協力を依頼し、不可能を可能にすることもできます」。緊急性・重要性が高い案件では、海外のベンダーに直接お願いに行くこともある。「インドで急に大量に部材が必要になったときも、すぐにアジアのベンダーを訪問し直接交渉しました。さらに、同じ部品を使っている各地の生産拠点にギリギリまで待てる納期を確認。各生産拠点は製造ラインに影響がないよう一定数の部材を確保しておきたいものなのですが、現場の方と生産スケジュールを囲んで、1日単位での調整を行って、インドに優先的に回せるよう調整しました。結果、3ヶ月かかると言われた納期を1ヶ月に縮めることができました」と言う。

直接会えない海外拠点とは、メールや電話だけで済ませずにテレビ会議を定期的に実施している。時差の関係で、「アメリカとのテレビ会議は朝8時からなので7時半には出社して準備をします。逆にインドとは夜にテレビ会議を行うなど、案件が立て込んでいるときなどは時間の調整もハードです。でも、相手の顔を見て、声色を聞いて、人となりを感じて言葉の奥にある『真意』をくみとる。これは調達を成功させるためには必要なことです。なにより、グローバルな仲間とのコミュニケーションを通じて、少しずつでも新たな仕組みを作っていけるのが、この仕事の醍醐味だと思います」。そんな竹川だが、プロジェクトに参加した当初は部品の名前を言われてもどういうものなのかも分からない状態だった。「ただ目の前の案件の対応をしているだけでは知識はついてきません。品質監査を行うときなど定期的に工場に行かせてもらい、設計の方から現物を見ながら説明を受けて知識を自分のものにしたり、『どんな役割なのか』『どう違うのか』といった疑問をそのまま流さずに調べる、確認することを心がけています」。

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スポンジのように

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TMEICがグローバル調達に力を入れ始めて5年。最初は日本の工場に対して安いベンダーを探して輸入するのが主なミッションだったが、今は現地法人の支援、グローバル最適購買の実現が大きなミッションになっている。「半年に一度実施しているGSM(Global Sourcing Managers Meeting)という会議では、各現地法人の調達部門とIPO(International Procurement Office)と呼ばれる海外調達拠点の調達マネージャーが集まり、本社側からTMEICの調達方針の説明、お互いの調達に関する活動とメーカーに関する情報を報告します。その後、半年間の具体的なアクションプランを決めていくのですが、中国、インド、アメリカ、シンガポール、イギリスと様々なバックグラウンドを持つ方が20人も集まっているので議論も白熱します。オールTMEICで最適購買を目指す私たちにとって、様々な意見を聞ける貴重な時間となっています」と竹川。

武村はTMEICの調達に携わって10年になるが、「調達の仕事は奥が深いなと。調達って物を買うだけでしょと思われるかもしれませんが、生産拠点やベンダーとの調整だけでなく、新規ベンダーの開拓、基本契約の締結、関税など貿易条件の確認、やるべきことは多岐にわたり、それだけにとても重要でやりがいのある仕事です。多くの人とコミュニケーションを密に取りながら知識・情報を吸収し、整理して付加価値をつけてアウトプットする。そんな調達の仕事をスポンジに例えたりしています」と言う。

開発もだが、調達の仕事もゴールはない。「ベンダーと交渉し条件どおりの結果を出せたときは嬉しいですが、一瞬のことです。製品自体も競合他社がいてコストが下がり続けているので、常に安く買える方法、製品を探して活動をしていかなければいけません。自分が汗をかいた分だけ喜んでいただける調達の仕事が好きなので、期待に応え続けたいと思います」と竹川は言う。より良く、より早く、より安い部品を世界中から世界の生産拠点へ。これからもTMEICのものづくりを支えていく。

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Interview movie(インタビュー動画)

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