買取制度開始後、全国各地の遊休地や建物の屋上などにメガソーラー(1MW以上の出力を持つ大規模太陽光発電システム)を設置する計画が急増。それに伴い、パワコンの大量注文が相次いだ。「当社は、太陽光発電の市場が小さかった1983年から大規模太陽光発電用のパワコンを納入しており、さらに2011年にパワコン専用工場を建設して生産体制を整えました。現在は、ひと月で400台近く生産することができますので、他のメーカーと比較して圧倒的な供給量です。この生産体制があるからこそ、お客さまの様々なご要望にお応えできるようになっています」と青田は言う。
いつも心がけているのは、相手の本当の気持ちを引き出す・感じ取ること。制度開始後に新規参入した企業の担当者は、あまり太陽光発電に詳しくないこともある。そんな時は特に、相手の質問・相談・オーダーにそのまま応じるのではなく、発言の背景や相手の立場・本心を探り、ポイントを的確についた『答え』を用意しようと努めている。そうすることで、顧客がイメージしている太陽光発電所を具現化するための、最適な提案ができると考えている。「お客さまとのコミュニケーションは、『1+1は?』という問いに対して『2です』ではダメだと思っています。答えとして正しくても、本当の意味でお客さまの役に立てていません。お客さまは当社を『パワコンのトップメーカー』と期待していただいていますし、私のことを「パワコンのプロ」として認識して下さっている訳ですから、そのお気持ちに応えられるように、と思っています」。
気付けば、全国200ヶ所に500台近くのパワコンを納めてきた。どんなに忙しくても、現場に行くことを欠かさなかった。「もともと鉄道が好きで、普段からきっぷを記念に保管しているのですが、この仕事を始めてからは、もう500枚になるでしょうか。現場に行くと、お客さまや施工現場の皆さんとの心の距離をぐっと縮められます。そして、当社製品に対する評価や他社製品との違い、『もっとこうして欲しい』というご希望や時には私へのダメ出しをざっくばらんに聞けたりします。そういった現場でこそ聞ける本音を、自分の動きや当社製品をより良くするために活かしたいと思っています」。
現場に行って、この仕事の意義を再確認することもある。たとえば、埼玉県桶川市の太陽光発電施設「ソーラーオンザウォーター桶川」の竣工式。日本初の水上メガソーラーで、災害時や停電時の非常用電源を確保できる。「竣工式に参加している皆さんの顔を見ていたら、地域にお役に立てたんだと改めて感じることができました。やっぱり嬉しいものですね」。
商社勤務の経験がある青田は、当時の仕事と比べて、今は「作り手とつながっている点が面白い」と言う。「ただ製品を販売するだけでなく、自社工場の仲間と話し合いながら、お客様のニーズに合わせた製品づくりを一緒に目指せるのが大きな喜びですね。直接物作りに携わらない“営業”は、作り手とお客さまとの“橋渡し”が仕事です。でも、どうせなら100点満点の橋渡しを目指したい。ところが、私は営業としてまだまだですし、未熟もいいところです。もう毎日が反省、自問自答の日々なんです。だから、たまにお客さまから感謝の言葉をいただけた時は、感無量ですね」。青田は、これからも「ありがとう」の言葉をパワーの源として日本全国を駆け回ることに生きがいを感じ続ける。