工場で使われる電力は"メガ"単位。家庭用コンセントで使用される電気が100Vの15A~40A程度(数kW程度)に対して、工場の場合は電流も電圧も"キロ"単位。数十kV~百kV級の大きな電圧を電力会社から受け取る“受電設備”、その電力を使いやすい電圧に変える“変電設備”、各機器に給電する”配電設備”。これらを多種多様な選択肢から組合せ、安全・確実に工場内にエネルギーを行きわたらせるために最適な集合体をシステムとして考え、エンジニアリングしています。
- 概要・特長
- 納入事例
背景
昨今、政府の再生可能エネルギー固定価格買取制度の影響もあり、再生可能エネルギー案件の計画が増えてきております。
出典:エネルギー白書2018
TMEICも、工場電気設備としての受変電機器納入案件と並行して、再生可能エネルギー案件への受変電機器納入に力を入れております。
特に最近では、大型の再生可能エネルギー発電所の計画も多く見られ、日本における再生可能エネルギーの導入促進に期待がかかります。
そんな中、これまでに無いような再生可能エネルギーの計画がありました。
「発電した電力を、数十キロも離れた電力会社の幹線に接続する。」と言うものです。
いくら日本が小さいとは言え、発電所から電力消費地までの距離が数十キロ程度離れること自体はごく普通のことです。ただ、今回特殊なのは、「電力を作る場所(発電点)」も、「電力会社幹線に接続する場所(連系点)」も、「その間の数十キロ送電(送電線)」も、全てが「一つの発電所の構内」として扱われる、と言う点です。
一般的な工場は、いくら大きいと言っても、数キロ程度の大きさでしょうか。
それに比べれば遥かに長い「構内送電」となりますが、日本の土地事情を考えれば、大規模な土地を使っての発電が、大電力を送るための電力会社幹線の近くでは実現できないことも頷けます。
さて、この「長距離の構内送電」はどんな問題を内在しているのでしょうか。
問題はどのように評価すればいいのでしょうか。
また、問題を解決するために、何をすればいいのでしょうか。
課題
まずは、問題点を抽出しなくてはなりません。
それは、思いつきでの抽出ではなく、過去の経験や実績に基づいた、漏れのない網羅的なものでないといけません。
TMEICであれば、経験豊富な変電のスペシャリストがいます。「長距離の送電」において、どういった問題が内在しており、どのように評価、解決をしていけばいいかの知見、ノウハウがあります。
機器を納入し、運転を始めてから問題が起きてしまっても、場合によっては解決が難しいこともあります。
よって、こういった検討は機器手配の前に、系統の設計の一環として実施される必要があると考えます。
さて、「長距離の送電」とはどういったものでしょうか。
長距離の送電は、一般的には皆さんも良く見る「送電鉄塔」を用います。
ただ、一般住宅がある地域で送電鉄塔を用いると、「電磁波の懸念」や「景観の破壊」、「用地の確保」等、色々と解決が大変な課題があります。
そうなると、代わりになるのが地中にケーブルを埋める、地中ケーブル送電です。
ケーブルは架線を用いた鉄塔での送電に比べ、「静電容量」が大きいことは有名です。
良く話題になるのは回転機の自己励磁現象による過電圧などですが、回転機が無く(例えば、インバータ/コンバータで風車エネルギーを変換する)、自己励磁現象が起きないような場合であっても、長距離のケーブルによる大きな静電容量が引き起こす問題は色々とあります。
●地絡による過電圧
●フェランチ効果による過電圧
●電源遮断時におけるVTの放電耐量
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などなど、すべてをご紹介することは出来ません。
ここでは、簡単にこれらをご紹介していくことにしましょう。
解決方法
挙げられた課題の中には、「地絡」、「フェランチ」や「放電」などの聞き慣れた言葉も出てきますが、実際の系統を相手にした場合、どうやってこれらの事象を評価していくのでしょうか。
TMEICには、色々な解析技術のバックグランドがあります。
ひと口に「解析」と言っても、世の中には色々な計算ソフトがあり、それぞれの事象を理解し、事象にあった計算ソフトを選定し、そのソフトを使いこなし、結果の評価を行うところまでが「解析」です。
大事なのは、ソフトを使うこと自身ではなく、事象を理解して、結果を評価することです。
少し検討の結果を見てみましょう。
- ■地絡過電圧
上記の例では特に大きな電圧にはなりませんでしたが、地絡時は健全相電圧が√3倍になるだけでなく、過渡振動による電圧も重畳されることが見て取れます。
これが機器の絶縁を脅かすような数値になってくると、機器の絶縁を高める検討が必要となってきます。
- ■フェランチ
フェランチによる電圧上昇ですが、連系点の変圧器と、長距離送電区間の静電容量が影響することで発生します。
コンデンサによるフェランチ現象ではコンデンサを切り離しておく、と言うことがよく知られていますが、主幹ケーブルでは切り離す訳にもいきませんので、場合によっては静電容量を打ち消す分路リアクトルの設置を検討する必要が出てきます。
- ■電源遮断時におけるVTの放電耐量
事故などの影響により、長距離送電区間が両端遮断で切り離されると、静電容量に応じて蓄えられていた電荷は行き場を失い、切り離された区間内にVTがあるとVTに流れこむことになります。
電荷の流れは電流ですので、VTが電流に耐えられるか、を電荷量とVTの放熱耐量との比較で検討する必要があります。
導入効果
- ■豊富な経験に基づく的確かつ様々な技術検証を実施
- ■トータルコーディネートによる万全な体制
解決方法例のように、ニーズに伴って起き得る事象を的確に理解し、その問題を評価、解決出来る技術者により、設計に先立っての検証を行うことが出来ます。
また、その技術者自身が実際の機器選定から手配、設計に関わっていくことで、計画段階から納入までのトータルコーディネートを実施しております。