電源トラブルからデータや設備を
守る切り札!UPSとMPC

電源トラブルに対する
備え

予期せぬ停電から社会インフラを守る
「UPS(無停電電源装置)」

UPSとは

UPS(Uninterruptible Power System:無停電電源装置)とは、予期せぬ停電や瞬低などの入力電力異常が発生した場合でも、
付随するバッテリ電源を使って、コンピュータ、通信機器、制御機器などの重要設備・機器(負荷機器)に安定的に電力を供給する装置です。

JEC(一般社団法人電気学会)では「単相又は三相※1600V以下の一定電圧、一定周波数の交流電力を給電し、
かつ、一般的に直流リンクを介して接続するエネルギー蓄積装置を持つ据付形の無停電電源システム」と定義し、
その機能や仕様について規格化(JEC-2433)されています。

UPSの主な利用用途

UPSの主な利用用途

UPSの動作原理と給電方式

UPSは、交流/直流を変換するコンバータ、インバータなどのパワーモジュールと、バッテリモジュールで構成されています。
また、給電方式では、「常時インバータ給電方式」と「常時商用給電方式」の2タイプがあります。

UPSの動作原理と給電方式

常時インバータ給電方式
(オンライン方式・ダブルコンバージョン型)

商用電源(交流)をコンバータで直流に変換しバッテリに充電しながら、コンバータで変換した直流電源をインバータを使って既定の電圧と周波数に制御し、交流出力する方式です。
また、停電の際にもバッテリからインバータを介して安定した電力を供給し続ける極めて信頼性の高い給電方式です。

商用電源を直接使わず、常にインバータを介したラインから給電しているので「オンライン方式」、
また、電力を交流→直流、直流→交流と2回変換することから「ダブルコンバージョン方式」とも呼ばれています。

常時インバータ給電方式(オンライン方式・ダブルコンバージョン型)

  • ・常時安定した定電圧定周波数出力を供給可能
  • ・常に正弦波出力を継続
  • ・停電切替え時に出力電圧歪がない
常時商用給電方式
(オフラインスタンバイ方式)

通常時は商用電源を負荷機器に給電しながらバッテリに充電し、停電時には商用電源をスイッチで遮断した後、
バッテリに充電した直流電源を交流に変換し給電する方式です。常時は商用電源を使い、バッテリ側からの給電ラインは待機状態で、充電・待機しているため「オフラインスタンバイ方式」とも呼ばれています。

常時インバータ給電方式と比較して、交直変換の回路などがシンプルなので低消費電力でコンパクトなシステムです。

常時商用給電方式(オフラインスタンバイ方式)

  • ・シンプル・コンパクトで低コスト
  • ・通常時、商用直送出力のため電力ロスが少ない

瞬低から工場を丸ごと守る
「瞬低補償装置」

瞬時電圧低下(瞬低)とは

瞬低とは、送電システムにトラブルが生じ、送電ルートを切換える際に生じる瞬時電圧低下という現象です。
日本では20%以上の電圧低下は年間約5回程度の頻度で発生しています。その半数以上は1秒未満ですが、
1~20秒が20%程度、36秒以上が約10%という割合です。

瞬低の発生原因の約30%弱は風雨・水害で、次に雷が約8%と続き、自然災害が原因の半数近くを占めています。
また、近年では地球温暖化による異常気象の多発で、長時間停電につながるケースも増加傾向にあります。

原因別電気事故件数※3

UPSの主な利用用途

また、商用電源が安定していても、例えば工場など大電力を必要とする電気設備を稼働させた際、
電力不足が生じ、同一系統に接続された電気機器への供給電圧が低下することもあります。

瞬低補償装置とは

瞬低補償装置とは、瞬低対策としてユーザー側が設置する電源装置です。
UPSは低圧(600V以下)の電圧対応で数100kVAクラスまでの容量が一般的ですが、瞬低補償装置は高圧(6,600V)まで対応しているので10MVAクラスまでの大容量化が可能です。その為、大規模なプラントや工場全体を範囲に含めることができます。

瞬低補償装置の主な利用用途

瞬低補償装置の主な利用用途

瞬低補償装置の動作原理と給電方式

瞬低補償装置の動作原理と給電方式

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停電・瞬低の影響について

私たちが日常生活で使っている家電製品など一般消費者向けの電気機器は、瞬低が起きても大きな問題が生じることはありません。しかし、以下のような大型の電気設備・機器を使う施設や、社会インフラ施設では、停電や瞬低によるさまざまなリスクが生じるため、自家発電設備の設置と同時にUPSや瞬低補償装置の設置が望まれます。

工場・プラント
瞬低により大型の工作機械、モータ、インバータ、プロセス制御機器などの多くの電気設備・機器がダメージを受け生産ライン全体が停止したり、停止に至らなくても生産製品の品質低下を招いたりするリスクがあります。また、電気設備・機器に大きな故障が起こらず物理的な損害が無くても、復旧・点検作業にかかる人件費の増加や、ライン停止による生産機械の損失、品質低下によるブランドイメージの低下など、さまざまな不利益が生じます。
データセンター
スマホから企業の業務システムまで、クラウドサービスが普及した現在、その中核を担うデータセンターには、サーバーやストレージ、通信機器、空調設備などさまざまな電気機器が備わっています。中でもHDDなどのストレージ機器は停電や瞬低に対して特に脆弱で、突然電源を喪失すると、記憶領域が物理的に損傷し、データ喪失の可能性が生じます。
また、通信機器の故障や一時的な停止は、ネットワーク接続が不能となりクラウドサービスのユーザーにも多くの不利益をもたらします。
鉄道・公共交通
鉄道などの公共交通で停電や瞬低が発生すると、電車が急停止するだけではなく、改札や信号、通信などの安全システムも停止し、多くの人が足止めされるなどその影響は甚大です。
病院・医療施設
病院や医療施設のサーバーには電子カルテやCT、MRIなどの診断用画像データなどが保存されます。また、精密で重要な医療機器が使われています。病院などで停電などの電源トラブルが発生すると、通常の医療業務に大きな支障をきたします。
  • ※1 単相と三相:交流電源で単相とは1つの正弦波で電気を送る方法で、一般家庭向けなどとして普及している伝送方法です。
    一方、三相は、3つの正弦波を等間隔に重ね合わせ、効率よく伝送する方法で、大きな電力を必要とする工場などで採用されています。
  • ※2 HSS(High Speed Switch)…瞬低が発生した際、商用電源からバッテリ電源に、復旧時にはバッテリ電源から商用電源に切換えるMPCの要となる装置
  • ※3 出典:電気事業連合会HPより