大容量電力変換技術で、
カーボンニュートラル社会に変換!
カーボンニュートラル
実現に貢献する
電力ネットワークの構築
2015年にフランスのパリで開催された第21回気象変動枠組条約締結国会議(COP21)での合意を受け、
世界120以上の国と地域が2050年までにカーボンニュートラル達成という目標を掲げ、
日本政府も2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。
これを受け、産業界でも温室効果ガスの排出量削減が求められ、
特に製造業では、「水素」の活用や加熱プロセスの「電化」がカーボンニュートラル達成のキーとなります。
再生可能エネルギーが作る
「グリーン水素」が
化石燃料に取って代わる
カーボンニュートラルの実現には、エネルギーネットワークの革新が必要です。
現在のエネルギー供給システムは、化石燃料を一次エネルギーとし、
それにより発電された電力を二次エネルギーとして利用しています。
これに対し、将来的に再生可能エネルギーを一次エネルギーとするエネルギー供給システムの構築に向けて、
太陽光・風力発電などの普及が急ピッチで進められています。
しかし、太陽光・風力発電は発電量が天候に左右され、現在は発電量に余剰が生じた場合、
電力システムの安定運用のため、発電量を抑制することがあります。
こうした課題を解決するために注目されているのが、グリーン水素の活用です。
グリーン水素とは、再生可能エネルギーによって製造される水素です。
例えば、太陽光発電の場合、日中の余剰電力でグリーン水素を生成し、蓄積することで、
発電量が少ない時、電力に戻すことも出来るため、
余剰電力の有効活用と同時に、より安定的な電力供給を実現します。
さらにグリーン水素は、化石燃料から電力に変える電化が難しいとされる
長距離輸送システム(航空機、トラック)、大規模な加熱プロセスなどでも
化石燃料に代わるクリーンな燃料として注目されています。
グリーン水素の供給ネットワークが作られれば、再生可能エネルギーが主電源となる
新たなエネルギーネットワークを補完することが可能です。
そして、再生可能エネルギーとグリーン水素の活用というカーボンニュートラルに向けた双方の取り組みを、
効果的、効率的に結びつける役割を果たす技術が水素製造用整流装置です。
水素製造の電力は変換器により、再生可能エネルギーの発電量の変動に応じて制御できるので、
デマンドレスポンス※1が容易となり、さらに電力の蓄積にも対応する設備としての活用が期待されています。
カーボンニュートラルを
実現するための
エネルギーシステム転換
![カーボンニュートラルを実現するためのエネルギーシステム転換](../img/p2_05/img1_2.png)
3つのネットワークから構成される将来の
エネルギーネットワーク
![3つのネットワークから構成される将来のエネルギーネットワーク](../img/p2_05/img1_3.png)
余剰電力とは
![電力網](../img/p2_05/img1_4.png)
グリーン水素についてもっと知る
![水素](../img/p2_05/img1_5.png)
水素は、1つの陽子と1つの電子で形成される最もシンプルな元素です。宇宙誕生(ビッグバン)の直後に形成され、現在でも宇宙を構成する元素の約90%を占め、太陽(恒星)のエネルギー源(核融合反応)となっています。また、生物の生命活動にとっても不可欠な元素であると同時に、私たちの日常生活や経済活動を支えるエネルギー源となるなど、多様性の高い物質でもあります。
水素はさまざまな方法で製造されますが、燃料など商用として取引される水素は、主に化石燃料を原料に改質する方法と、化学プラントで副次的に発生する水素を回収する方法で製造されています。
水素は、製造過程での環境負荷によって分類されています。
まず、化石燃料を原料に高温で分解・改質して製造された水素は、製造過程で大量のCO2を排出するので「グレー水素」。次に、製造過程で発生したCO2を回収して地中に貯留したり、燃料などに利用したりすることでCO2排出量を削減した「ブルー水素」。
そして、近年、カーボンニュートラルの切り札として注目されているのが、風力、太陽光などの再生可能エネルギー電源を活用し、電気分解によって製造される「グリーン水素」です。
![グレー水素、ブルー水素、グリーン水素](../img/p2_05/img1_6.png)
現在、従来の重化学工業メーカーだけではなく、再生可能エネルギー事業者をはじめとするさまざまなスタートアップ企業がグリーン水素ビジネスへの参入が進んでいます。それに伴い、水素を低コストで、大量製造・輸送するサプライチェーンの構築や、水素を次世代の燃料、エネルギーとして活用する技術開発も盛んに行われています。
<グリーン水素の主な活用法>
- 燃料電池
- 電気分解による水素発生の逆の原理で、水素と酸素を化学反応させることで直流の電気を起こす装置。EV(電気自動車)や家庭用の電源としての普及を目指し、コンパクト化・高出力化の研究開発が進んでいます。
- 水素発電
- 火力発電と同様、水素を燃焼させたエネルギーでタービンを回転させ発電するCO2を排出しないクリーンなエネルギーです。水素は一定の濃度を超えると酸素と反応し爆発(水素爆発)する危険性があるので、完全に封止して輸送・活用する技術の確立がポイントです。
- 水素エンジン
- 水素を燃料とした内燃機関です。現在、自動車メーカー、発動機メーカーを中心に本格的な実用化を目指した研究開発が進んでいます。
- 合成燃料
- 触媒反応を利用して水素と一酸化炭素(CO)から合成された炭化水素とアンモニアなどを原料に、ジェット燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)などサステナブルな合成燃料を製造する取り組みが始まっています。
カーボンニュートラル実現のために
「電化」の開発が進む
大規模な産業設備
産業界にはボイラーや炉など、化石燃料を熱源に利用する工程が数多くあります。
IEA(International Energy Agency) によると、エネルギー消費の中で熱利用が最大で、
全世界の消費の半分を占めていることが報告されています。
化石燃料による熱利用の削減には、ヒートポンプやグリーン水素に加え、
加熱プロセスの電化が有用です。
電気炉は、炉内で鉄スクラップと黒鉛電極の間にアーク放電を発生させた熱で鉄スクラップを溶解します。
電気炉のCO2排出量は、化石燃料を熱源とする高炉との比較で約1/4であり、
脱炭素時代に注目される製鉄プロセスです。
しかし、電気炉の活用を推進するためには、アーク放電を利用することで生じる
電圧変動やひずみといった課題に対策が必要になる場合があります。
これら電圧変動やひずみといった課題に対策する装置として、
SVCS(Static Var Compensator System:静止型無効電力補償装置)があります。
SVCSは、電圧の変動・電力不足・電流の不平衡を検出し、それに応じて電力を調整することで、
炉の性能が低下するのを防ぐことができます。
製鉄プロセス
![製鉄プロセス](../img/p2_05/img1_7.png)
大容量電力変換装置の必要性
現在、カーボンニュートラルの実現に向けて、グリーン水素の製造と活用への期待が高まると同時に、
製造業においては加熱プロセスの電化が進められていると述べてきました。
そして、これらに対応するためには水素製造用の整流装置や、
SVCSといった電力変換装置の大容量化が必要とされています。
- ※1 デマンドレスポンス:供給量に合わせて需要量を調整する手法