ドライブって、
車を運転することだけじゃない。

モータドライブ装置の
種類・主な用途と機能

モータドライブ装置とは

モータドライブ装置はインバータ・コンバータ回路で構成されたインバータ装置のことで、
電圧や周波数を自在に変える装置の総称になります。

工場やプラントの動力源であるモータの回転数や電力供給能力を効率的に制御する役割を担っており、
主にモータを効率的に運転(ドライブ)する目的で使用されるため「モータドライブ」装置と呼びます。

モータドライブの仕組み

モータドライブの仕組み

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インバータ装置と各回路の関係

インバータ装置の主な用途は交流電気の電圧や周波数を変えて、モータの回転速度を変化しながら制御することにあります(可変速制御とも呼ばれています)。
モータは電源周波数に基づいた速度で回転する性質があり、ファンやポンプなどの動力源用途で周波数を変えずに一定速度のまま運転を続けると無駄なエネルギーを消費し続けてしまいます。
これでは機器の負担が増えるだけではなく、運転コストが増えるばかりです。運転状況に合わせて回転数(周波数)を制御することで、効率的な運用と消費電力を抑えた省エネ化が可能になります。

コンバータ回路部分
交流を直流に変換することを整流といいます。コンバータ装置は交流を直流に変換する役割を担う為、AC-DCコンバータや整流機とも呼ばれています。
コンデンサ部分(平滑)
整流しただけの直流には交流の名残りのようなさざ波状のリップルと呼ばれる電圧変動やサージ電圧が残っています。これをコンデンサを利用して電流を緩やかに減少させて平滑します。
インバータ回路部分
直流を交流に変える役割を担います。

インバータ装置に対し、コンバータ装置は交流を直流に変換する役割を担います。コンバータ装置は独立した装置として働くのではなく、インバータ装置の外側に接続して利用したり、「回生エネルギー」を活用する目的でインバータ装置とセットで使用するのが一般的です(TMEICはインバータ装置内に回生機能を内包しています)。

電源回生機能

電源回生機能

回生エネルギーとは、モータが回転することで得られる電気を返す電力のことを指します。そのまま回生エネルギーを放置したままにしてしまうと、電気エネルギーを抱え込むことで電圧が上がり、装置に必要以上に負荷がかかり損傷するリスクが出てきます。その為、従来は抵抗器を装置に接続して電流を流し、エネルギーを熱に変えて放出していました。
しかし、これではエネルギーを熱にして捨てるだけなので、電力を無駄にしています。この電力を無駄にせず、再利用する為の機能が回生機能と呼ばれるものです。これにより発生したエネルギーを電源側に戻すことで、省エネ効果が得られるだけでなく、同じ系統につながった別の機械や設備の電源用途としても使用が可能になります。

また、インバータ装置はダイオードコンバータ、サイリスタコンバータ、IGBTコンバータ、PWMコンバータ等を自在に組合せて目的に応じた回路を選択し、設置環境に適した構成を構築します。

ダイオード
半導体デバイスの一種であるダイオードは主に整流目的で使用されています。
サイリスタ
サイリスタはダイオードの一種であり、導通のタイミングを遅らせることが可能です。
IGBT
IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)はパワー半導体デバイスの一種であり、電力の制御や供給する目的で使用されます。
PWM
PWM(pulse width modulation:パルス幅変調)は電流を正弦波化し、高調波電流を大幅に低減することが可能です。

モータドライブ装置の種類

モータドライブ装置の主な機能や求められる機能、対応しているモータ等を紹介します。

モータドライブ装置の種類

また、モータドライブ装置は主に工場の生産設備に使用されるシステム用、
ファン・ポンプ用途に使用される単機用の二つに分類されます。

システム用途
周波数や電圧を可変してモータの回転数や速度を制御するシステムのことで、様々な用途で使用されています。システム駆動とも呼ばれています。
単機用途
工場内の動力用ファンや水処理施設のポンプなどの単機装置を効率的に可変速制御する用途で使用されています。直入れ駆動とも呼ばれています。

また、適切な容量を選ばないと電圧や電圧が不足したり、
関連機器の電力負荷が増えてしまい故障に繋がってしまいます。
利用用途や目的に合わせて最適なモータドライブ装置を選ぶことができるように、
TMEICでは様々な容量帯のラインアップを用意しています。

電圧・容量一覧

電圧・容量一覧

モータドライブ装置の主な制御技術

モータの回転数を制御する基本的な制御技術から最先端の効率制御に至るまで、
モータドライブ装置には様々な制御技術があるモータドライブ装置。
基本的な制御やTMEIC製品に採用している制御技術の一部を紹介します。

インバータ制御

従来、ファン・ポンプ用途でモータを制御するにはダンパ制御が採用されていました。ダンパ(調節弁)でファンの風量(流量)を制御する性質上、モータは常に一定の回転数で回るため、 大きな軸動力を必要とします。しかし、インバータ制御ではモータの回転数を下げるだけで風量(流量)を制御することができ、 回転速度の3乗に比例して軸動力が減少する性質もある為、大幅な省エネ運転が可能になります。

ブロワ運転の特性例

インバータは周波数を自在に変えることができる装置です。
モータに加わる電気の特性がある周波数を変えることで、
モータの回転速度を連続的かつ自在に変えて制御することが回転数制御です。

回転数制御

周波数とモータの関係

周波数が高くなるとモータは速く回転し、周波数が低いとモータはゆっくり回転する性質があります。この性質を利用して周波数を変換することで回転数を自在に制御します。

※回転数は周波数で制御できますが、周波数のみを下げてしまった場合、モータの交流抵抗が下がり、電流が大量に流れてモータが焼損してしまいます。これを防ぐには周波数だけでなく電圧も同時に変える必要があります。

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ベクトル制御

ベクトル制御は、モータに流れる電流のうち、トルクになる電流(トルク分電流)と回転子に磁界を発生させるための電流(励磁電流)を分類し、モータ電流の方向をベクトル演算し制御する方法です。モータの特性に見合った電流を供給できるため、誤差の少ない精度の高い運転が可能になります。

ベクトル制御

サージ対策が不要になるスイッチングシフト制御

落雷等による高電圧サージ、回路の開閉時に起因する開閉サージ等、インバータ回路には従来、サージと呼ばれる電源障害対策が必要でしたが、スイッチングシフト制御では出力フィルタを必要とせず、モータへのサージ対策等が不要になる制御技術です。

サージ対策が不要になるスイッチングシフト制御

効率的な運用に欠かせないPWM制御

PWM(Pulse Width Modulation)とは、半導体を使った電力を制御する方式の一つです。オンとオフの繰り返しをスイッチングで行い、出力される電力を制御します。また、マルチレベルPWM制御方式を採用することにより正弦波に近い電圧の出力が可能となり、効率的な運用が可能になります。

※PWM制御では高速スイッチング機能によりパルス波形を生成し、パルスの時間を変化さて、出力される平均電力を制御する方式です。従来のインバータが0Vと入力電圧値の2段階出力だったものに対し、0Vと入力電圧値とその中間の電圧平均値の3段階のパルスを出力するものを3レベルインバータと呼びます。3レベルインバータはマルチレベルインバータとも呼ばれ、この方式のPWM制御がマルチレベルPWM制御インバータとなります。

効率的な運用に欠かせないPWM制御

無効な電力の抑制

工場やプラントの効率化を達成するには、省エネ性能等、効率性を高めるための
高効率技術だけでは解決できないものもあります。
そういった課題の一つに電源自体の持つ性質改善があります。
消費されない性質のある電気をインバータ装置で有効利用することで解決していきます。

効率的な運用に欠かせないPWM制御

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高力率

実際に働く電力(有効電力)は電圧と電流の積(皮相電力)より小さくなる性質があります。供給された電力のうち何%が有効に働いたかを示す比率が力率です。力率の悪化は設備利用率の低下を表す重要な指標の一つです。
また、電力会社では、力率85%を基本として1%改善する毎に基本料金を1%ずつ割引するという施策を取っており、
力率の改善によって電気料金が優遇され、電力会社との契約基本料金を削減することが可能になります。
TMEICは、PWMコンバータを採用することで、電源高調波を大幅に低減し、力率の100%を実現しています。

高力率

PWMコンバータはインバータのモータ運転から独立して装置容量の範囲内で進み・遅れ無効電力を発生させることができます。
その為、PWM制御を採用したインバータ装置では、連続的な力率制御が可能となる為、モータの速度に関係なく力率を安定させることが可能です。

無効電力制御

無効電力制御

進み/遅れの無効電力のオン・オフを制御することで、モータを運転しながらインバータを利用して関連する電力設備の無効電力を最小に抑えることが可能になります。(最大でインバータ容量70%の無効電力補償が可能)。

電源障害の抑制

周波数を変換する際に生じる電圧変動は、長らく電源障害を引き起こす要因の一つとされていました。
電源障害の一つに高調波電流による電源障害があります。
インバータ装置等のエレクトロニクス機器から発生する高調波が
他の設備や電気機器に障害を与えることを抑制するために、
経済産業省から高調波対策ガイドラインが定められています。

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高調波対策

主に交流を直流に変換するコンバータ回路で発生する高調波。電流を流す・流さないという制御において、電源の電圧波形を歪ませる性質があり、歪んだ電圧が電源側に流れることでコンデンサやトランス(変圧器)に熱が加わり、焼損させてしまったり、関連機器の誤動作が発生する等、電源障害の原因とされ、高調波が発生しにくい対策が必要になります。

高調波対策

直列多段インバータを採用することで、ほぼ正弦波の高電圧を直接出力することが可能になります。その為、高調波対策として従来使用していた高調波フィルターが不要になり、高圧モータの直接駆動が容易となるメリットもあります。