発電と水質浄化を行う
微生物電池システム

微生物電池は、「発電菌」を利用した、発電と水質浄化を併せ持った新たなエコシステムです。
TMEICはこの微生物電池に着目し、産学連携による共同研究を開始しました。
自社の保有する薄膜成膜技術、電池・電力制御技術、電力変換技術を活用し、
パートナーと共に微生物電池の実用化を目指し、オープンイノベーションを推進しています。

システム概要を動画でご紹介します 動画でわかる微生物電池システム 微生物電池システム - 微生物による新たなエコシステム -

微生物電池とは

発電菌と微生物電池

私たち人間をはじめとして生物は、炭水化物やたんぱく質、脂質などの有機物を分解して
生命活動に必要なエネルギーを取り出して生きています。これを代謝といいます。

1980年代後半にシュワネラ菌(Shewanella)が発見されたことを契機に、
有機物を代謝する際に電子を放出する微生物の存在が明らかになりました。
この発見以降、電子を放出する微生物を利用する研究が盛んに行われるようになりました。

このような代謝の際に電子を放出する微生物は「発電菌」と呼ばれ、
発電菌によって電気エネルギーを生み出す装置が「微生物電池」です。

代表的な発電菌(Shewanella loihica)

発電菌 提供:大阪公立大学 大学院工学研究科/LAC-SYS研究所
床波志保 准教授/副所長

微生物電池は、アノード(-極)・カソード(+極)・アノードとカソードを繋ぐ電極・
アノードとカソードを分けるセパレータ(隔膜)などから構成されます。

アノードでは、発電菌による代謝が行われ、有機物の分解が進みます。
この際発生した電子が、電極を通じてアノードからカソードに移動することで電流が発生します。
カソードでは、移動してきた電子によって酸素が還元され、水となります。

微生物電池は、カーボンニュートラルであるバイオマスを使用した発電方法です。
また、バイオマス発電やバイオガス発電とは異なり、発電時に燃焼を伴わないため、火災や爆発等のリスクは低くなります。
発電菌として利用する微生物は、自然界に存在し、病原性が低いものです。

微生物電池は、発電菌という微生物の活動を利用した、
環境負荷が小さく、安全性の高い再生可能エネルギーと言えます。

微生物電池の原理 微生物電池の原理

微生物電池の現状

微生物電池の実用化に向けて、様々な観点から研究開発が行われています。

発電菌から得られる電気は微弱であるため、発電菌自体を高密度に集積・保持することにより、
発生した電子を効率よく捕集し、実用レベルの大きな電気として利用を目指す研究が盛んに行われています。

大阪公立大学では、発電菌を多数の微細な孔(ハニカム)の内部に捕集する技術を開発しました。
光や磁場等の外部からの力(外場)によって、シート表面に形成されたハニカムの内部に発電菌を誘導し、
生きたまま高密度に捕集する技術です。

外場誘導による発電菌濃縮技術 外場誘導による発電菌濃縮技術

このハニカムシート表面に金属などで薄膜を形成し、電極とした「微生物電池セル」によって、
高密度に集積された発電菌から電気を生み出すことが可能になります。

TMEICはこの技術に着目し、2022年から大阪公立大学と共同研究を開始しました。
2023年4月からは大日本印刷株式会社も加わり、三者による共同研究を開始しました。